血糖値測定器の実際の使用シーンについて、若林歯科医師にインタビューを行いました。
歯科医院での血糖値測定を推進する参考になれば幸いです。

血糖値測定の患者さんへ勧めるポイント

●患者さんに血糖値測定を勧める際の声掛け

■新規の患者さんの場合

最初に、
「口の健康は全身の健康と同じですよ」
「なので血圧と血糖値と骨粗鬆症のスクリーニングをさせてもらってます」
とお伝えしています。

このとき、
「させてもらっていいですか?」ではなく
「しています」と言い切るようにしています。

■既存の患者さんの場合

「今、こういうプロジェクトをやっています」
「じゃあ何のためにやってるかっていうと…」
という流れで、歯周病と糖尿病の相関についての話をさせてもらっています。

そのとき、ACON血糖値測定器のホームページを一緒に見ながら
「こういう機器があるんですよ」と説明しています。

「本体が無料なので、ご自身でも申し込んだら使えるけども
今うちで全部検査を含めて無償でさせてもらってるので
良ければ測定させてもらえませんか?」
という風にお伝えしています。

●院内のスタッフにはどのような声掛けをしていますか?

スタッフからの声として、
「患者さんにどうやって説明していいか分からない」
みたいな話をよく聞きます。

あとは、
「なんて言おう、どうしよう…」
「何って聞かれたらどうすればいいのかな…」
といった声もありました。

話を聞いてみると、どうやら
「詰められたらどうしよう…」みたいな気持ちがあるみたいなんです。
変に構えてしまっているんだと思うんですね。

ただ、実際のところ嫌がってる患者さんはほとんどいないんです。
単純に「健康を害したくないですよね」っていう話から始まって、
測定も無料なので。

なので、そんなに難しく考えなくて大丈夫です。

そんなときは、
「別にガチガチに何かするわけじゃないから」
「普通にこういう感じで話をして」
「そしたらそんなに嫌がらないと思うよ」
と声をかけてあげるようにしています。

●血糖値測定のとき、事前に患者さんに聞いておくべきこと

最近の食事内容や食事のタイミングについて聞くようにしています。
例えば、

  • 空腹時であるかどうか
  • 最後の食事から何時間経過しているか

を確認します。

正確な値を得るためには食後2時間後の測定が理想的ですが、患者さんの来院時間に合わせて柔軟に対応しています。

●血糖値の基準として、どのくらいの値から内科医へ紹介していますか?

一般的な基準にならい、空腹時血糖値が110mg/dL以上、食後血糖値が140mg/dL以上の場合に内科医への受診をお勧めしています。
ただ、患者さんの状態や既往歴を踏まえて判断することもあります。

●患者さんの血糖値が高かった場合、患者さんにはどのようにお話されていますか?

血糖値が高い場合には、『少し血糖値が高めのようですので、一度専門の内科で診てもらうことをお勧めします』とお伝えします。

その際、糖尿病と歯周病の関係性について改めて説明し、早期に対処することで健康を維持できるという前向きなメッセージをお伝えするようにしています。

<後日談>
先日、血糖値が230mg/dLと非常に高い患者さんがいらっしゃいました。

「年に1回は血糖値を測定してるけど、ぜんぜん数値とか覚えてない」
「まあ費用もかからないからやってみます」という感じで測定してみたら
2回測定して2回とも230mg/dL前後とすごく高い数値が出ました。

230mg/dLといったら、もう糖尿病予備群ではないかもしれないですが、
本人には自覚症状がぜんぜん無かったようなので、
それこそ今回のプロジェクトがきっかけで発見に繋がった事例です。

この件に関しては、
「近隣の内科か総合病院かどちらかを紹介します」
というお話をして、次回来院のときに紹介状を渡すことになっています。

内科との連携についての質問

●内科医に向けた紹介状にはどのような内容を記載されていますか?

基本的には、日本糖尿病協会のフォーマットに従って紹介状を書いています。
紹介状には、糖尿病予備軍の疑いがある旨や、歯周病の進行状況などを簡潔に記載しています。
さらに追加資料として、詳しい歯周病の数値、レントゲン写真のコピーなど、添付していった方がより良いと考えています。

また、糖尿病と歯周病の関係性を説明する資料を同封する準備を進めています。
患者さんが内科で適切な診断と治療を受けられるよう、情報を整理して伝えることを心掛けています。

その他、医科歯科連携について
「ご近所医科歯科連携導入マニュアル」という本がとても参考になります。

  • こんなケースはこのように紹介状を書く
  • このように近隣の内科医と連携を取ってる

など具体事例がたくさん書いてあります。

●内科医との連携をスムーズにするために実施されていることはありますか?

現時点では特別な取り組みはしていませんが、内科医の先生に直接挨拶に伺い、こちらの取り組みについて説明することが有効だと考えています。
また、内科医に参考資料を提供することで、糖尿病と歯周病の関連性について理解を深めてもらうよう努めています。

●歯科医の先生方が使えるテンプレートやツールなどはありますか?

現在、紹介状や記録シートのテンプレートを準備中です。
完成次第、他の歯科医の先生方にも共有できる形にする予定です。

また、患者さん向けの説明資料も作成しており、それらを活用することで歯科医と内科医の連携がスムーズになると考えています。